川上未映子

2014.05.09

猫のジョルジュと、なんて、むずかしいの

あっというまに時間が過ぎてパリともさらば。
『Seins Et Oeufs』(「乳と卵」)『De toutes les nuits, les amants』(「すべて真夜中の恋人たち」)、そしてつぎは「ヘヴン」を刊行してくれるフランスの出版社Actes Sudのお招きによるプロモーションのための滞在だったわけですが、取材も含め時間がやっぱり少なくて今度はもうちょっと長く予定を組みたいと思ったり。

ル・モンド紙のインタビューでは、創作活動や作品の内容についてはもちろん、日本における女性の立場や活動について関心があるみたいで、そのあたりの質問をたくさん受けた。逆にどんな情報がありイメージを持っているのか、わたしはフランスの女性の立場についてこのようなイメージがあるけれどじっさいのところはどうなのか、などなど逆取材みたいな感じにもなってインタビューというよりは対談みたいにもなったのだけれど、出産育児と就労の関係やむずかしさ、あるいは増えたかのようにみえる選択肢の問題点などなど、制度の違いはあれ双方に大きなズレはなく(もちろん、とくに出産育児にかんしてフランスの制度を見習うべき点はたくさんあるけれど)、本質的にはどこもしんどいな、という手ざわりだった。

とくに日本では、たとえば子育てをする女性が自立できるだけの収入を確保するために働くには、それが祖母でも祖父でも誰でもいいけれど、専業主婦的に献身的に24時間対応で子育てにむきあってくれる存在がなければ不可能なのだよね。

子どもは急に熱を出すし、日々アクシデントの連続だから、保育園やシッターさんという環境だけで母親が単身者とおなじように仕事をこなすことはできない。24時間態勢でめっさ働いてめっさ稼いでいる女性が「すべての女性が手に職をもって、いつでも自立できるように自分たちとおなじようになるべき」という理想をときどきいうし、みんながそうできるならどんなにいいだろうとわたしも思うけれど、そしてそういう理想をいう女性がすべてそうだとはいわないけれど、しかしたいていの場合、24時間、親身な立場でフレキシブルに対応してくれる人が自分の母親だったり身内だったりにいる場合が多い。くりかえしになるけれど、全力でばりばり働こうとする人がいるところには、常に専業主婦的役割を引き受けてくれる人が必要な(もしくは、いる)のである。男女問わず、日本の就労システムは専業主婦を必要とする、飽きもせずそんなあんばいになっているのだよね(ためいき)。もちろん、わたしだってもれなくそうで、単身者だったころの半分しか仕事ができていない現状だけれど、しかし今回のような海外出張などの場合に息子を預かってくれる大阪の姉がいてくれるおかげで、精神的にも実際的にも、「半分しかできていないな」って感じる程度で済んでいるのだと思う。ああ、色々がどこまでもむずかしいことよのう。

 

 

「乳と卵」「すべて真夜中の恋人たち」、そして「ヘヴン」を翻訳してくれているパトリック・オノレさんとわたし。

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ホテルはなかなかに女の子が好きだろうな!というインテリアで素敵だった。

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素敵な階段。

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そしてActes Sudのすばらしいお庭。

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向こうからやってくるのは…

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Actes Sudの猫、ジョルジュ。

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ジョルジュとわたし。

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